地球公論6

黄金の旅団は行く、どこまでも                   
鈴木“QT”剛

プレカリアートは増殖/連結する―――フリーター全般労働組合が呼びかけた「自由と生存のメーデー08」は、全国の有象無象と企み、情況に反撃し、増殖/連結していった。資本と国家が、私たちを分断し、互いに争わせ、自由を剥奪し、不安定な生存を強いることに対して、私たちは抵抗し、私たちの価値観を対置し、増殖/連結する。実行委が全国の仲間に発した連帯メッセージの中に次のようなフレーズがある。

「生きることはただ働くことではなく、人と出会い、騒ぎ、楽しみ、別れることのすべてです」
 
私たちプレカリアートが増殖/連結するために、「黄金の旅団」は結成され、果てしない旅に出かけた。まさに全国の仲間と出会い、騒ぎ、楽しみ、別れるために。
 
「黄金の旅団」の構想(妄想?)は昨年のメーデーが終わった直後から考えていた。フリーター全般労組メーデーが一ヶ所で拡大するより小規模でも多くの地域で多様な視点からメーデーが開催されることが望ましい。対象を「雇用労働者」に狭めず、生存の在り方にまで視点を拡げ、たった一人が自己の生存の在り方をめぐって声を上げれば、これを支援してゆくべきと考えた。08年に入り、メーデー実行委を立ち上げ、議論する中で、各地のメーデー開催を呼びかけ、キャラバン隊を以下のようなコンセプトで結成することが決まった。
①各地のメーデーを知らせ、知りあい、交流を深める。②金銭的・精神的に困難を抱えているプレカリアートの自由な移動を助ける。③メーデーをやりたいという意思を持った団体個人を支援する。④問題企業への抗議行動を横断的に実行する。⑤「黄金の旅団」の旅程をロードムービーにして、全国上映会をおこなう。
 名称は、アントニオ・ネグリの来日中止騒動で「赤い旅団」、「風の旅団」を想起した。またメーデーのスローガンを検討する中で「黄金週間、カネもないからメーデーでも行くか」という案が出て、金のない連中が「黄金の旅団」を名乗るのは面白いという意見で固まった。
 7名の仲間が27日の夜明けに東京を出発し、名古屋、熊本、福岡、広島を巡り、5月3日の自由と生存のメーデーに帰還した。途中で降りた仲間、乗り込んだ仲間、各地の多様なメーデーでの出会いと別れが繰り広げられた。他の地域にも別の仲間たちが「旅団」を結成して出会いと別れを繰り返した。「遣欧黄金使節団」と称した2名の仲間はミラノ、ベルリンへ向かった。結果、全国では、熊本、福岡、広島、大阪、京都、岐阜、名古屋、松本、東京(3ヶ所)、新潟、仙台、つくばみらい、札幌、という13地域で15のまちまちなメーデーが開催された。東京のデモ隊は最終地点の新宿アルタ前で1000名を超すプレカリアートに増殖した。
 来年は100ヶ所開催で大型バスツアーだ、「ユーロメーデー」でなく「世界メーデー」だ、昨今の排外主義を乗り越えてアジアの仲間たちと連結するぞ、と早くも妄想逞しい。妄想いや想像力が権力を奪うのだと。
黄金の旅団は行く、どこまでも。生きることは、ただ働くことではなく、人と出会い、騒ぎ、楽しみ、別れることのすべてであるから。


light--6 目次
【巻頭】「黄金の旅団は行く、どこまでも」 鈴木“QT”剛

【読物】「ネットカフェ難民の仲間へ」 路漫住雄

    「請負日記3」 大寺智子

    「プレカリアートプロレタリア文学 3」 田野新一

    「ルンペンプロレタリアートは階級上昇の夢を見るか? 3」 戦闘的ゴジラ主義者

【詩】 「あのばあさんの思い出」 07副執行委員長三浦仁士