ついに完成!7月21日発売・「フリーター労組の生存ハンドブック〜つながる、変える、世界をつくる」


ついにできました。
フリーター労組委員長の清水直子と組合員の園良太が中心になりました。この2人とフリーター労組の多彩な組合員やその関係者が、自分の得意分野で文章を書き、それ以外の身近な方にもインタビューや文章をお願いしました。「働く」「生き延びる」「仲間とつながる・行動する」「ステップアップ」の4つに分け、困ったとき、何かしたいと思ったときにいつもベースになるようなことをコンパクトに書いています。仕事や住まいで困ったときにどうすればいいかから、団体交渉やサウンドデモのやり方、「戦争」民主主義」や「世界とつながる」といったテーマの拡大まで。

いつもカバンやポケットに入れて気軽に使ってもらえる、でも中身は面白い。そんな本になるようがんばってます。みなさんぜひ読んでくださいませ。 作る時に考えていたことや背景はまた書きます、本の趣旨を書いた、自分の「あとがき」を載せます。(園良太)

フリーター労組の生存ハンドブック〜つながる、変える、世界をつくる」

清水直子・園良太 編著/フリーター全般労働組合員ほか執筆
7月21日発売予定 定価1450円+税
大月書店 http://www.otsukishoten.co.jp/ 


■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

はじめに 清水直子

第1章 働く(すべて清水直子

1 いきなりクビ!と言われたら 〜解雇・雇い止めのとき、まずやるべきこと

2 「売り上げが落ちたから解雇」ってアリ? 〜経営悪化の責任を労働者に取らせるな! 

3 そんな条件、聞いてません! 〜労働条件のウソや勝手な変更を許さない

4 働いてるのに、給料が出ない…… 〜遅配・未払い・違法な天引き

5 ピンハネに泣き寝入りしない 

6 過労死・過労自殺から逃げろ! 〜仕事に殺されないために 

7 セクハラ・パワハラに負けない

8 使わなきゃ損! 働く人の権利を守る制度 〜労働保険・社会保険を利用しよう

9 まともな仕事に就きたい! 〜ヤバい求人広告にだまされないために

10 「働く」ための相談窓口 〜一人でも加入できる主な労働組合

第2章 生き延びる

11 生活を立てなおす 〜実践!生活保護ってこんな制度(清水直子/協力・湯浅誠さん)

12 生活を立てなおす その2 〜生活保護申請から支給開始まで(清水直子/協力・湯浅誠

13 制度活用(田野新一、フリーター労組執行委員)

14 ギリギリの命を支えあう場がある 〜不安定な仲間の命を支える越冬闘争(田野新一)

15 屋根の下に住まわせろ! 〜動き出した「自由と生存の家」構想(菊池謙、フリーター労組会計)

16 衣も食も、お金がなくてもクリエイティブに! 〜新宿の「NU☆MAN」から

17 もし「生きていたい」とすら思えなくなったら 〜僕の「ひきこもり」体験から(市野善也、組合員)

18 「生きのびる」ための相談窓口 〜生活保護の申請や利用、多重債務についての相談先


第3章 仲間とつながる

19 労働組合という武器の使い方 〜団結する、団体交渉する、団体行動する(基礎編)、鈴木剛a.k.a QT(副執行委員長)

20 立ち上がれば勝てる! 〜団結する・団体交渉する・団体行動する(応用編)、鈴木剛a.k.a QT

21 街に出てアピールしよう〜街頭宣伝・街頭アクション (園良太)

22 デモ1 ゼロからはじめるデモづくり〜仲間づくりとコンセプト(園良太)

23 デモ2 デモで表現しよう 〜グッズやコール、「サウンドデモ」の作り方(園良太)

24 デモ3 デモを広める・続けるために〜デモ申請・防衛、もし逮捕されたら、マスコミや世間との付き合い方(園良太)

25 私たちによる、私たちのための情報発信〜DIYメディアを活用しよう(よねざわいずみ、執行委員)

26 女性どうしでつながる〜運動の場での模索(根来祐、映像作家・組合員)

27 地方はつらいよ〜七転び八起き奮闘編(馬野骨介、肥後コミューン運営委員)

28 地域・運動を越えてつながる〜「P8」から生まれた連帯(Esaman、カメラマン・LOVE&ビンボー作戦本部・貧乏参謀)

第4章 ステップアップ

29 万国の労働者、休め! メーデーをはじめよう(山口素明、副執行委員長)

30 共同妄想で分断を超える〜正規・非正規、世代、性、国籍etc.を超えて(三浦仁士、執行委員)

31 社長はいらない! 〜経済崩壊に立ち向かう自主生産・自主管理(菊池謙)

32 プレカリアートは増殖する〜世界の仲間と手を結ぼう(noiz、組合員)

33 民主主義を想像/創造する〜「麻生を倒せ!ないかくだとう」プロジェクト(園良太)

34 戦争と貧困のスパイラルから降りる〜殺し殺される世界を変えよう(園良太)

おわりに 園良太



■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□

あとがき 世界や未来へ開かれていくことを願って

 この本はとても多彩な内容になったと思う。労働で困った時、ひとりでは生きていけなくなった時、つながりたい・何かやりたいと思う時、さらに先の行動や考えを目指す時。人が生きる中でぶち当たる様々なシーンに力を与えられるものを目指した。フリーター労組は普段から、各自のやりたいことを最大限活かしてつながろうとしている。そうしてこの内容を可能にしてくれた清水さんや組合員のみなさん、全国独立系メーデーのみなさん、「NU☆MAN」はじめ各地で多彩な活動にとりくむみなさんにまず感謝したい。 
         
 日本社会で経済不況と格差が深刻化した1990年代以降、私たちには不安・不満や「何もできない」というあきらめの気持ちが広がってきた。自分もそうした空気の中で育ってきたし、無力感をいつも抱えていた。デモで声を上げる前に毎年3万人以上が自殺する。たまに登場するヒーローは誰もが市場経済の推進者だった。そこへ世界恐慌と派遣切りの大津波がやってきた。大企業が世界中へ進出し続ける一方で、私たちは狭い日本の中だけで閉塞させられ、未来が見えなくなっていく。

 でも同時に僕は「社会運動があるじゃないか」とずっと思っていた。小さな場作りから大きなデモまで、前向きにやれることはたくさんある。すでにここ数年間だけでもサウンドデモや労組作りなど様々なチャレンジがあったし、そこに出会った人たちは、つながれば生きていける、おかしいことには声を上げていいし、自分たち自身で新しいものを作り出せると気づきはじめた。それは世界各地でも行われている。マスコミやネットの不安を煽る情報の渦に飲み込まれ、それらは多くの人にまとめて伝えられる機会が少なかった。何も行動が起きなければ、これからも政府や大企業は私たちの生活と世界を悪化させていくだろう。 

 これは「本」でも同じだ。編集の仕事をしていたので、買う人を悩ませるほどの本が大量生産されてはすぐに店頭から消える現状をおかしいと思っていた。本全体が売れなくなる中で、一部の有名人がただ現状を大ざっぱに語るだけの本が作られ、売れていく。映画や音楽など他の表現分野でも同じことが起きている。それでは、本当の意味で人を勇気付け力を生み出すものは生まれないと思うのだ

 本書ではそれでも意味のあるものを作りたいと話し合い、様々なシーンで誰もが自分から「使える」本を目指すことにした。もちろん、各項目で述べられたことには限りもあるので、教科書やセオリーのように読まれることは望んでいない。あとはみなさんがこれを踏み台にして新しいものを生み出して欲しい。

 また狭い意味の雇用問題を超えて未来への希望が見れる内容にしようとした。「つながる、変える、世界をつくる」という副題にもその思いが込められているし、紹介した数々の実践の多様さ・自由さがそれを物語っているのではないかと思う。

 その目的を完全に理解して「ハンドブック」というタイトルをつけ、この多彩な原稿に適切なアドバイスをし続けてくださった大月書店編集部の岩下結さんと、私たちをよく知り、深い意味を込めたイラストとデザインをくださったフリーターユニオンふくおかのいのうえしんぢさんにも感謝したい。みんなで一つの本を作るのはとても楽しい体験であり、読者の方に少しでも有意義な本になっていたらこれ以上ない喜びだ。 
 
 もちろん生きていればうまくいかないことはたくさんある。たがどんなにつらい状況に置かれた人でも、人とつながれば自分の人生を自分で決めていくことができる。どうか本書をバックの中に入れて、いつでも使いこなして欲しい。そして周りの人と一緒に読みながら、自分たちのアクションを話し合って欲しい。

 フリーター労組や本書に書かれたアクションに参加したい、自分もやりたいと思ってくれたら、いつでも気軽に連絡をしてほしい。協力できることはたくさんあるし、どこにでも行きたいと思っている。貧困も差別も戦争も無い世界を目指していこう。そうして誰もが未来へ開かれていくことを願って!

2009年6月 園良太