外国人を搾取するな

以前にも、組合ブログで報告してきたとおり、農家で働いている外国人男性Aさんが雇い主側の家族と口論になり、それがもとで仕事を解雇されてしまったという件です。

茨城県の農家で農作物の箱詰め・出荷で力仕事が必要な繁農期になると、人手の少ない専業農家では、外国人を安い賃金で雇う代わりに住み込み代を無料にして働かせています。

周辺の農家は、ちょっと前にメディアにも取り上げられた「中国人研修生問題」が起きた地域でもあります。今でも本件近隣の農家では、相変わらず中国人の研修生を安い労賃で働かせている農家もいます。農家では、中国人ではリスクがあるので、インドネシア人の労働者数人単位で働かせています。しかも、そこには、仕事を紹介・斡旋する「ブローカー」なる役割を担う人物がひとりいて、彼が東京を含む関東近辺から仕事を探している外国人を集めてきてはこの農家に紹介しているそうです。

さて、F労で関ることになった案件ですが、昨年の暮れに事務所に相談に来た外国人男性Aさんも、最初はこの手のブローカーを信用して農家の住込み仕事に就いたのです。何も知らずに仕事をはじめた彼は、農家の敷地内にある古いコンテナを改造した住居に住まわされ、朝8時から夜6〜7時頃まで農作物の刈入れから出荷準備まで40キロの重さはある箱を手作業で積み上げる肉体労働に従事していたのです。休日はなし。何か用事がある場合のみ事前に雇い主に申し出てから休みを貰うという激務でした。

そんな、勤務が連続していると当然疲労がたまります。Aさんは以前から、あばら骨を痛める持病があったので、雇い主に頼んで休みをもらい病院に連れて行ってもらいました。しかし、簡単な診察を受けたのみで家に帰されてしまったのでした。その翌日は仕事を休ませてもらったのですが、翌日から仕事をすることになりました。

しかし、翌朝、Aさんは始業時間の8時前に仕事に出掛けてみると、雇い主の家族から「こんな時間に出てくるバカがどこにいる」などと怒鳴られ、説明をしようとするAさんは「おまえは理屈が多いからもう来なくていい」とまで言われたのです。Aさんは、前日に社長から指示を受けていた時間に間に合うように職場に出て来てにも拘らず、そのような言い方をされ、なぜそのような言い方をされるのか判らなかったといいます。仕方がなく、あとから来た社長にどうしたら良いか尋ねたところ、これまた「もう辞めたいなら辞めていい」などと言われ、「そんなことは言っていない。誰の指示に合わせればいいか教えてほしいだけ」と応えたのです。すると社長は、「もういいや。いらない。あなたは辞めていいよ」と、解雇通告をしてきました。Aさんは何度か社長の言葉を確認しましたが、「ああそうだクビだ」と言う社長の答えは変わりませんでした。あまりの突然で酷い態度にAさんは呆れて部屋に帰ったのです。この日、2011年の12月30日から、Aさんは就労できていません。

Aさんに対する、社長のとった解雇は不当であり、当然認められません。組合はAさんを職場復帰させるように、この農家に対して団体交渉を求めました。そして、2度にわたり団体交渉を行ないました。「解雇手当は出す」などと言っていますが、提示した金額は、とても「解雇予告手当」に満たない額でしかありません。組合としても、Aさんの不当解雇を認めないので、彼が仕事に出られなくなってから団体交渉に至るまでの日数について、休業補償手当を含む補償を要求しています。彼は「休業状態」で仕事が出来なくなった分、まったくの無収入でしたので生活も立ち行かなくなってしまいます。ましてや、複雑な状況の外国人ばかり雇っている職場なので雇用保険すら加入していません。Aさんには、失業手当すら下りないのです。そんな状態でどうやって生活していけば良いのでしょうか。

組合は当然の補償を要求しました。ところが話し合いを解決の方向に持っていくどころか、入国管理局に通報したのです。Aさん以外の外国人労働者を入国管理局に連行させ、彼らに支払うべき給料すら踏み倒そうとしたのです。酷いやり口です。自らの不誠実な姿勢を開き直り、「これ以上直接、労使が話し合っても埒が明かないから労働委員会を間に入れましょう」などと言い、今年の4月20日までに労働委員会あっせんについての返答を組合に入れると約束しました。しかし、いまやそれすら無回答。何の返答や連絡すらないのです。その間にも、組合はただ黙って待っている訳にも行きませんので、東京都の労働委員会に職員あっせん・仲介を申し込みました。しかし、その呼び出しにも応じることなく、話し合いを拒んできました。まったく意味不明でかつ不誠実な態度にAさんと組合は、このような雇い主が、今後もまた同じように外国人労働者をクイモノにしてのうのうと農業を生業として続けてこうとしているのです。組合は断固として闘います。

Aさんと組合は、4月22日付けで争議通告書を送付しました。

また、交渉の続いている時期に労使とはまったく関係なく資格もない、ただ以前から付き合いのある不動産会社に交渉の内容を漏らし、組合への「説得役」を負わせるなど、交渉関係を破壊する明白な不当労働行為を行ないました。
外国人への不当解雇、労基法違反の過酷な労働時間のおしつけと組合への不当労働行為を真摯に認めて本件を解決の方向に進めるまで、組合側は闘いを続けます。

Aさんを苦しめる不当な使用者に対して、組合は団体行動権にもとづく争議を継続します。今後、組合は「争議権」を行使し、法が認める最大限の行動で使用者を追い詰めていく闘いを行なうことになります。組合の争議行動は、誠実に話し合いに応じるまでいつまででも、継続的に行なわれるでしょう。