Q&A「改めて雇用保険って何? どうやって手続きするの?」

Q.
 5年間IT系企業でプログラマーとして働いてきました。経営不振のため、会社が退職金を割り増しして希望退職を募っていたので、これに応じて退職しました。これまで会社のやり方に納得いかないことが多かったのと、これを機会にキャリアアップを目指そうと思ったからです。会社からは、「会社都合の退職だから、雇用保険の失業手当はすぐもらえますよ」と言われたのですが、そもそも雇用保険ってなんですか?

A.
 雇用保険は、働いている人が失業したときなどにお金を給付する国が運営している保険です。失業したときにお金を受け取れるから失業保険ともよばれます。一定の給付を行うことで、生活の心配をせずに一日も早く再就職してもらうのが本来の目的です。
 働く人を雇った場合、1週間に20時間以上、31日以上継続して雇用する見込みがあるときは、正社員だけでなくパートや派遣、契約社員など雇用形態を問わず、働いている人や会社の意思にかかわらず、加入が義務づけられています。
 雇用保険の保険料は、働いている人と会社がおおよそ半分ずつ負担します。給与明細に雇用保険という名目で保険料が差し引かれていたはずです。見てもらえればわかりますが、雇用保険の労働者負担分は、1000円程度。入っておいたほうが絶対に得です。
 解雇など会社都合で退職した場合、手続きをすればすぐに失業手当が給付されますが、辞職など自己都合で退職した場合は、3ヶ月は失業手当が受け取れない給付制限期間があります。自己都合で退職すると、失業手当を受け取る上では、不利になるのです。希望退職に応じるというかたちで退職したので、会社都合扱いになったんですね。
 保険料を負担していても、退職するまで何ももらえないとなると、長く務めている人は損をした気分になりそうです。雇用保険といえば、失業したときにもらう失業手当(正式には「基本手当」といいます)が知られています。
 雇用保険には、この失業手当以外にも、厚生労働大臣が指定して民間の教育訓練機関が実施する教育訓練を受講した場合に受講料の一部が支給される「教育訓練給付」、育児休業や介護休業で休んだために賃金が支払われなかった場合に、賃金の一部が支給される「育児休業給付」「介護休業給付」、など働きながら活用できる制度があります。

 失業手当をもらうには、いわゆる離職票が必要です。離職票が発行されるまでの流れは、こうです。
 会社は、雇用保険に加入している従業員が退職する場合、退職・解雇の日から10日以内に「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」を会社を管轄するハローワークに提出しなければなりません。会社が最初にハローワークに提出する「雇用保険被保険者離職証明書」には、「離職理由欄」、つまり「その人がなぜ会社を辞めることになったのか」を記入する欄があります。この欄は、まずは会社が記入しますが、会社が書いた離職理由に対して異議があるか・ないかを記入する「離職者本人の判断」という欄があります。離職理由が自己都合とされてしまうと、給付制限期間が設けられるだけでなく受け取れる失業手当の金額も少なくなるので、きちんとチェックして、異議があればその旨、しっかり記入しておきましょう。
 会社から送られたこれらの書類をもとに、ハローワークから「資格喪失確認通知書」と「雇用保険被保険者離職票」が会社に公布されます。雇用保険をもらうためには、この離職票が必要です。
 会社が離職票を渡してくれないときは、まずは会社に、雇用保険の手続きを取ったかを確認してください。していないようであれば、ハローワークに申告します。できれば、事前にハローワークに電話などで連絡をしてから行くとよいでしょう。そのときに、どのような書類を持参する必要があるかを聞いてください。
 ハローワークの職員とのやりとりは、ときにねばり強さが必要になることもあります。自分自身も負担した公的な保険を受け取るための手続きですから、あきらめずに交渉しましょう。

 失業手当をもらう場合、本人の住所地を管轄するハローワークに求職の申込みをして、雇用保険被保険者離職票を提出します。すると「失業認定日」が指定されるので、その日に、再度、ハローワークに行きます。その後、原則として4週間に一度、失業状態にあることの確認をするため、指定された日にハローワークに行くことになります。
 4週間に一度、ハローワークに行くなんてちょっとめんどうと思うかもしれませんが、失業手当は、就職しようとする積極的な意思があって、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、職業に就くことができない「失業の状態」にある人を対象に支給されるもの。
 このため(1)病気やけがのためすぐには就職できないとき、(2)妊娠・出産・育児のため、すぐには就職できないとき、(3)定年などで退職して、しばらく休養しようと思っているとき、(4)結婚などにより家事に専念し、すぐに就職することができないとき、はもらうことができません。このため、4週間に一度、「失業の状態」にあるかを確認するということになっているのです。
 なお、失業手当をもらえるのは、退職してから最長で1年間=12ヶ月です。つまり、退職してもなかなか手続きをしないで、11ヶ月目に手続きをした場合、仮に1年分もらえる要件が揃っていても、1ヶ月分しかもらえません。
 失業手当の手続きは、とにかく早くするに限ります。貯金を取り崩したりする前に、まずは失業手当の手続きをしてください。