論点1 零細自営とどう向き合うか

GSUの取り組みに関連して、以下のコメントが寄せられた。

相手が関東鉱油だからいいものの、こんな事個人経営の小さなスタンド相手にやったら大変な騒ぎだよ。
個人経営のオーナーに「ウチはセルフにするから、申し訳ないけど雇ってられない。」って涙ながらに言われたら同じこと出来るのか?

重要な提起だと思う。
だが同じことをすると私は答える。
具体的には、企業の財務諸表の開示、経営者に支払われた給与や経営者が状況を改善するためにした具体的な努力、などなど経営に関する情報開示を求め、解雇を回避するための継続的な努力を求める。経営側に帰すべき責任が果たされているのかどうかは、絶対に組合がチェックしなければならない。
そもそも整理解雇は、雇用される側の生活に重大な影響をもたらすにもかかわらず、その理由とされる経営に雇用される側はまったく関与できないままであるからだ。この点で関東鉱油に要求したのと同様の要求をする。(ちなみに関東鉱油はその要求にすら応じずに解雇を強行している)

それらが果たされた上で、組合は企業の資産を調査し、経営の継続が可能と判断すれば、経営者に引いてもらい、労働者管理の経営を継続する。継続困難との認識に組合が立つ場合は、必要ならば企業の資産を差し押さえて、配分する。

もちろん零細自営が経営困難となる傾向は、経営者の責任にのみ還元できることではない。もし経営者みずからが抱える矛盾を労働者に転嫁するのではなく、不安定化をもたらす政府の諸政策に対して共同で抵抗するならば、手を組むことも可能だと考える。(y)

論点3 権利と義務のアンバランス

これもGSUの取り組みについて寄せられたコメント

ガイアの夜明けを見ました。関東鉱油で30年以上前の学生時代にバイトをしていたので驚きました。バブルを越え、会社も社会も変わったんですね。当時私は高校生でした。今はフリーターと称して、バイトで充分生活ができるとは、いい時代ですね。拘束されるのを嫌ってアルバイトの身分を確保しながら、正社員と同じ権利、というのはどうなのでしょうかね? 権利と義務のアンバランスを感じるのは私だけでしょうかね?


「権利は義務と引き換えに与えられる」というのはよくある理解だ。もちろんこれを言うのは決してあなただけではない。また、これを言う人は、たいていあなたのように、伝家の宝刀を抜くがごとくこの言葉を記す。このことが私には不思議でならない。まったくそれがなまくらで切れやしないことに気づいていないことがである。
「権利と義務のバランス」を主張する人の想念は、おそらく権利と義務を量的に把握している。あたかもそれが天秤の両端にでも吊り下げられているかのようなイメージ。そしてその重さは恣意的に操作できる。論理的な必然としてではなく、誰かが、バランスを重視し、両側に何を架けるのかを操作できるものと考えている。権利を得れば義務も重くなり、義務が軽くなれば権利も軽くなる、という具合にだ。究極的には義務を果たさざるものに権利なし、ということになる。恩恵としての権利観の行くつく先だ。

また、このような物言いをする人々に限って、権利と義務の具体的な内容を記すことがない。誰が何を権利として主張し、義務として負うことを書くことがない。あるいは記した時には甚だしく間違っている。

たとえば先に引用した人の記述では、

(アルバイト) 拘束されない--十分生活できないほど待遇が悪い
(正社員)  拘束される--生活できるくらいに待遇が良い

という対応がバランスのとれた義務と権利の関係と理解されている。
だからバイトがストライキなどやって権利を主張すると、

(アルバイト) 拘束されない--生活できるくらいに待遇が良い
(正社員)  拘束される--生活できるくらいに待遇が良い

となってバランスを欠くと言うのである。

まず、拘束される/されない について。
アルバイトだろうが正社員だろうが、雇用契約を結んだのなら契約の条項に拘束される。もちろん労働基準法を下回ったり公序良俗に反する条項は無効だからそれには拘束されないのは当たり前である。アルバイトは辞めるのが簡単だが、正社員はそうもいかない、と言う人もいる。これもよくある嘘だ。雇用契約の解消は労働者側から申し入れることができる(民法627条)のだから、辞めるにあたってこちら側の差異はない。はて。何を指して拘束される/されないと考えているのだろうか。

待遇についても不思議だ。十分生活できないほど待遇が悪い、のは問題である。生活できないほど待遇が悪い職場がないように、労働基準法があり最低賃金制度がある。また、働けないことによって生活が破たんしないように、生活保護制度がある。生活できるくらいに待遇が改善されるのは望ましいこと、というのが社会的な合意であると思うのだが、これに何が問題があるのか。(y)

論点2 正社員でも残業でないとこはたくさんある

次もGSUの取り組みについて

正社員でも残業代でないとこはたくさんあります。
ミュージシャン目指してバイトしてるなら早くミュージシャンで正社員になったほうがいいのでは。。全国に自分は無職だと胸を張って言っている姿がとても醜いです。親や親戚が泣いてると思います。

「正社員でも残業代出ない」だから「正社員になったほうがいい」というのは意味が不明。
まして「ミュージシャンで正社員」というのはなかなか珍しい雇用形態だと思うので教えてほしい。どこで?
奴隷の姿に気づかず虚勢を張る方がはるかに醜い。人類史が泣いていると思う。

おっと言いたいのはそれではなかった。。

注目すべきは「正社員でも残業代が出ない」ことによって、非正規労働者が低条件での労働を余儀なくされていること。経営者と株主が巨利を貪っている一方で、多くの正社員たちがサービス残業という奴隷労働に従事させられ過労死・過労自殺に追い込まれている。死ぬまで働くという賃金切り下げ競争に参加する人が多くなれば、労働分配率は下がるに決まっている。
正社員がこのような競争から降り、正当に残業代の支払いを求めるようになれば、経営者は残業を減らさざるを得ない。仕事量が変わらないのならば、雇用への需要は高まりバイトは容易に解雇できなくなる。経営者と株主は取り分は減るが、そうでない人々にとってそれは良いことじゃないですか。だから闘え正社員。フリーター労組も支援する(y)