2.15ドイツ大使館申入れ 

 平日の正午。雨が降り注ぐなか、大勢のF労組合員が広尾駅からドイツ大使館に向けて出発した。昨年のFAU−Bに下されたベルリン地裁の不当な判決に猛烈に抗議し、申し入れ書を直接に渡し、事件の調査および会見を要請するためだった。

 FAUの呼びかけに応えて、既に1月29日と30日には20カ国、52都市で抗議行動が行われた。われわれは、2月20日ベルリン国際映画祭の最終日に予定されている当地でのデモと繋がれればと考えていた。いざ実行に移ると、この行動が向こうでどのように受け止められるか、こちらの現状と向こうの現状がどう共通するか、ど(2008年ベルリン・メーデー)のように相違するかなど、いろいろな思いが生じる。

 大使館では、警備員にこちらの目的を告げると代表番号を渡された。携帯からかけると、「労働問題担当」に転送されたが、いっこうにつながらない。そこで門前でF労の組合旗とバナーを広げて、その場にとどまった。バナーには「ベルリン地裁とドイツ連邦共和国はILO条約87号、98号を守れ!Cinema Babylonは誠実に交渉しろ!An Injury to One is an Injury to All」とあった。予想に反して、万事が穏やかだった。が、悪い気分でもなかった。

 ちょうど昼休みで、大使館職員が出てくるところだった。興味ありげにこちらを振り向くので「グーテン・ターグ」などと呼び掛けてビラを渡した。しばらくしてある職員から、その担当からは今朝電話があり、あいにく病欠であるという情報を受ける。再度電話を入れると別の警備担当の職員が出てきたので、申し入れ書を読み上げ、担当者に手渡すことが確約された。最後は、シュプレヒコールを挙げてその場を離れた。別の場所で解散し、そのまま職場や住居や自分らの現場へと流れていった。



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ベルリン映画祭を支える時給5ユーロの労働者?
シネマ・バビロン:「社会派」映画館の劣悪就労環境と組合潰し


ドイツは、私たちにとって労働条件や生活水準が日本よりも高い国として映ります。確かに標準的な労働時間や日数、長期有給休暇などの面で個人の権利が保障されています。しかし、ドイツでもそれらに預からないで、無権利な状態で働いている仲間が多数存在します。ベルリン映画祭の会場であるCinema Babylonの従業員は店長以外は非正規雇用です。基本給が5−8.5ユーロ(620−1050円)、有給休暇は取れず、時間外手当や祝日手当がない、試用期間の終了間際に従業員が解雇される、労働契約さえもない職場でした。
2009年1月に1人の労働者が不当解雇されたことをきっかけに、組合結成と労働協約の締結を望む声が一部の従業員の間から挙がりました。説明会には主催のFAU(自由労働者連盟:アナルコ・サンジカリストの個人加盟労組)の予想に反して多くの人が組合結成に熱心であることが証明されました。以来、職場の大多数が同FAUに加盟し、現在に至ります。


労働組合FAUに対して罰金250,000ユーロか禁固刑?
ベルリン地裁は判決を取り下げろ!


FAUは、2009年上旬に労働協約の案を提出し、Neue Babylon社に団体交渉を申入れました。会社側は応じず、よって6月には無期限の労働争議に突入します。以後各種メディアを利用して問題を社会に訴え、社前集会やボイコットの呼びかけといった直接行動で対峙してきました。社会的な関心と圧力が高まったそのとき、2009年12月ベルリン地裁はFAUが非合法であるという判決を出したのです。
判決の理由は、FAUに労働協約を取りまとめる実績がないというもので、FAUに弁明する機会は与えられませんでした。判決の内容は、Basis Gewerkschaft (地域労組)を呼称してはならないこと、これに反した場合は罰金250000ユーロ(3065万円)ないし6カ月以内の禁固刑が課せられるというものです。ベルリン地裁の判決は、労働者が自由に結社をし、その主張を社会に訴えることを犯罪としたのです。